2020年6月9日火曜日

軍需会社の労働者はすべて「徴用工」となった

軍需会社徴用規則(1943年)

厚生省令第五十二号
軍需会社徴用規則左の通定む
昭和十八年十二月十七日
厚生大臣 小泉親彦

〔第一~第三条略〕
第四条 指定軍需会社の生産担当者及当該軍需会社の営む軍需事業に従事する者は左に掲ぐるものを除くの外徴用せられるたるものと看做す指定軍需工場の生産担当者及当該指定軍需工場に於て行ふ軍需事業に従事する者に付亦同じ
〔一~十四の各号については略。陸海軍軍人や年齢14歳未満の者、常勤の従業委員以外の者などを除外対象とする規定〕
〔第五~第七条略〕

第八条 前条の徴用告知書には左に掲ぐる事項を記載すべし
一 徴用せられたるものと看做さるべき者の氏名、出生の年月日及本籍
二 従事すべき総動員業務を行う指定軍需会社又は指定軍需工場の名称
三 従事すべき総動員業務、職業及場所
四 其の他必要と認むる事項
〔第九~十四条略〕

附則
本令は公布の日より之を施行す


出典:『官報』第5080号、19431217日〈リンク
●解説

 労働力の不足のなかで戦争遂行のための生産を維持するため、日本帝国政府は、1943年末、新たな施策を打ち出した。政府が指定した「軍需会社」「軍需工場」の従業員を、原則すべて、国家総動員法第4条にいう徴用された者と見なすというものである。それを規定した厚生省令が、この軍需会社徴用規則である。これによって徴用されたとみなされた者は、勝手に職場を移れないし、命じられた業務を続けないと、国家総動員法違反で懲役1年ないし罰金1000円以下の処罰の対象となった。

 しかも、それまでの国民徴用令による徴用では、徴用期間は通常2年とされていたが、軍需会社徴用規則によって、軍需会社等の従業員を徴用されたと見なす期間は無期限となった。第8条には、期間について記載する規定がなかったのである。

 なお、軍需会社の指定は、第一弾として1944118日に行われた。指定された会社の名前は『官報』に掲載されている(軍需省・陸軍省・海軍省・運輸通信省告示第1号、1944118日、〈リンク〉)。そこには、20181030日の韓国大法院判決で勝訴となった原告が務めていた日本製鉄株式会社という文字も確認できる。

 つまり、日本製鉄に勤務していた原告たちは、厳密な意味での「徴用工」にほかならない。「彼らは徴用工ではない」と語った安倍首相らの言葉は、全くの間違いなのである。