2020年6月7日日曜日

「個人の請求権、消滅させてない」柳井条約局長

参院予算委員会 1991(平成3)年827

〇清水澄子君 そこで、今おっしゃいましたように、政府間は円滑である、それでは民間の間でも円滑でなければならないと思いますが、これまで請求権は解決済みとされてまいりましたが、今後も民間の請求権は一切認めない方針を貫くおつもりでございますか。

政府委員(谷野作太郎君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、政府と政府との間におきましてはこの問題は決着済みという立場でございます。

政府委員(柳井俊二君) ただいまアジア局長から御答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、あえて私の方から若干補足させていただきますと、先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。
 その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。




●解説

 下線は当ブログによる。清水澄子議員の質問に対して、外務省の柳井俊二条約局長が、日韓請求権協定で示された「請求権の問題は最終かつ完全に解決した」とは、国同士が持っている「外交保護権」を放棄したという意味であって、「個人の請求権を消滅させたものではない」と明快に答弁している。

   条約局長とは、外務省の法令解釈の責任者である。柳井はその後、外務事務次官、駐米大使を歴任。国際海洋法裁判所判事も務めた国際法の専門家だ。

 柳井答弁に先立つ91326日には、高島有終外務審議官が、参院内閣委員会で、日ソ共同宣言第6項にある「請求権の放棄」について、やはり、「外交保護権の放棄」を意味していると答弁している。