2020年5月27日水曜日

総督府幹部「志望を無視した強制供出」

1944412日の道知事会議での朝鮮総督府政務総監訓示

 内地移住半島人労務者の取扱に付きましては従来一定期間に之を補充交替せしむることとし単身渡航せしむるを例とし来つたのでありますが其の後の成績に徴し実際の事情に鑑み今回之等労働者の家族呼寄せを認むるの途を拓き且つ其の事情に応じ雇用期間延長の奨励を為さしめ得ることと致し、之と同時に処遇改善方に付種々折衝を重ねて居る次第であります。
 官斡旋労務供出の実情を検討するに労務に応ずべき者の志望の有無を無視して漫然下部行政機関に供出数を割当て下部行政機関も亦概して強制供出を敢てし斯くして労働能率の低下を招来しつゝある欠陥は断じて是正せねばなりません。


(4月13日、『朝鮮総督府官報』掲載)

●解説

 朝鮮総督府のナンバー2である田中武雄・政務総監が、日本内地行き労働者の動員が本人の意思を無視した「強制供出」になっていると指摘。労働能率の低下につながっていると批判している。総督府のトップは軍人であり、実際に民政など行政施策についてよく把握して指示を出していたのは政務総監であった。田中はこの後、内閣書記官長、いまでいう官房長官の地位に就いている。

 文中に「官斡旋(あっせん)」とあるように、この会議が行われた時点では、日本内地行き労働者の動員では、まだ国家総動員法第4条に基づく国民徴用令による「徴用」は実施されていない。「徴用」以前から、本人の「志望の有無を無視」した「強制供出」が行われていたのである。