三菱広島徴用工訴訟の事実認定(広島高裁)
三菱広島・元徴用工被爆者未払賃金等請求訴訟の控訴審判決での被害事実認定(2005年1月19日)
「控訴人らの徴用に関しては、当時の法制下では徴用それ自体は当然に違法とはいえないものの、その実行に当たって、国民徴用令等の定めを逸脱した違法な行為が行われたことが窺われ、旧三菱についても、この点で被控訴人国と同じく不法行為が成立する余地があるものと認められる」
「原爆が投下された後に、旧三菱が控訴人らの救護や保護のための何らの措置も講じず、そればかりか食事等も与えることなく控訴人らを放置していたこと、
また、その後、工場の操業が不可能となり、昭和20年(1945年)8月15日には戦争も終わり、徴用を継続する必要はなくなったにもかかわらず、一部を除いて、控訴人らを送還したり、控訴人らが自ら帰還するのに協力することもなかったことは、前記認定したとおりであり、
控訴人らが朝鮮から徴用されて旧三菱の上記各工場に配置され、施設内の寮での生活を義務付けられながら、作業に従事してきたという事実を考えると、少なくとも、これらの点は旧三菱の控訴人らに対する安全配慮義務違反であるというべきでる。
したがって、旧三菱は、これにより控訴人らが被った損害について賠償すべき責任を負うものと認められる」
原審:平成七年(ワ)第2158号損害賠償等請求事件
平成八年(ワ)第1162号損害賠償等請求事件
平成十年(ワ)第649号損害賠償等請求事件
控訴審:平成十一年(ネ)第206号損害賠償請求等控訴事件
●解説
三菱重工・広島(機械製作所、造船所)に動員された被害者らが起こした訴訟の控訴審判決で、広島高裁は被告の三菱重工の不法行為責任、安全配慮義務違反を認定している。
日本で三菱重工を相手に起こされた3件の戦後補償裁判の一つ。原告は韓国人徴用被爆者46人。彼らは、強制連行・強制労働に加え、原爆被爆後に放置されたことについて、国と企業に対し、国際法・不法行為、損失補償、安全配慮義務等により各1100万円の支払い、企業に対し未払い賃金の支払いを請求した。
裁判では、国が原告らに対して原爆医療法、原爆特別措置法を適用せず、放置したことについては不法と認め、慰謝料等の支払いを命じる一方(一部勝訴)、強制連行・強制労働に対する賠償請求は棄却した。
しかし上記のように、徴用過程における違法と原爆後に放置した事実、安全配慮義務違反については認めている。